映画『メリー・ポピンズ(Mary Poppins)』は1964年に公開されました。
舞台は1910年のロンドン。桜通りに住むバンクス家が乳母として子どもたちの所へ舞い降りたメリー・ポピンズによって「本当に大切なものに気づいていく」といったミュージカル映画です。
映画の中ではたくさんのユニークなシーンや歌と踊りがあります。
「お砂糖ひとさじで(A Spoonful of Sugar)」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(Supercalifragilisticexpialidocious)」「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」など、この映画で生まれた名曲が映画の様々なシーンを表現しました。
Contents
音楽データ
主な音楽担当
- ロバート・シャーマン(Robert B. Sherman)
- リチャード・チャーマン(Richard M. Sherman)
「メリー・ポピンズ」の音楽を担当したのはディズニー音楽を手掛けた音楽家としても有名なこの二人。シャーマン兄弟です。
兄のロバート・シャーマン、弟のロバート・シャーマンの二人はウォルト・ディズニーに誘われ「メリー・ポピンズ」を担当します。
この作品はシャーマン兄弟がデイズニー音楽で最初に担当した作品で、その後も『ジャングル・ブック』『おしゃれキャット』『くまのプーさん』など多くのデイズニー音楽を担当します。
代表曲
- 「お砂糖ひとさじで(A Spoonful of Sugar)」
- 「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(Supercalifragilisticexpialidocious)」
- 「2ペンスを鳩に(鳩に餌を)(Feed the Birds)」
- 「チム・チム・チェリー(Chim Chim Cher-ee)」
- 「タコをあげよう(Let’s Go Fly a Kite)」
「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「チム・チム・チェリー」など造語のタイトルがつけられた楽曲が作られました。
これらの楽曲などは不思議なおまじないの様な言葉を使った歌で観ている人を映画の世界に引き込んでくれます。
『メリー・ポピンズ』と音楽
『メリー・ポピンズ』はミュージカル映画として制作の構想から進められました。
ある日ウォルト・ディズニーはシャーマン兄弟に原作本「Mary Poppins」を渡します。
シャーマン兄弟は本を元に物語の構想についてウォルト・ディズニーと語ります。
ウォルトは原作のシーンに関わってくる”鳩の曲”をシャーマン兄弟に曲作りを依頼します。
その曲が「2ペンスを鳩に」となります。
ウォルトはその曲を聴いてシャーマン兄弟に「音楽がすべてなんだな」と言った後、「曲を書いてくれ」と言いました。
シャーマン兄弟は「もちろんです」と答え、その日からたくさんのディズニー音楽を担当することとなったそうです。
「2ペンスを鳩に」は映画の早い段階から作られていたようですね。
お砂糖ひとさじで
メリー・ポピンズが子ども部屋を片付けるシーンで使われた曲です。
「That a spoonful of sugar helps the medicine go down〜(スプーン1杯の砂糖でどんな薬もへっちゃら)」とリズミカルに歌いながら魔法を使って部屋を片付けます。子どもたちもそれを見て一緒に片付けます。
音楽に合わせて部屋のおもちゃや家具が動き出したり、ディズニーらしい音楽と映像が連動しているシーンとなっています。
この曲は兄のロバートの息子が学校でワクチンを角砂糖と一緒に飲んだことからヒントを得たそうです。
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス
シャーマン兄弟が作った曲には「子どもたちに新しい言葉を覚えてもらいたかった」という思いがこめられた曲がいくつかあります。
この「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」もその一つです。
長い造語となっているこの楽曲でも子どもたちが口ずさみたくなるような楽曲となっています。
作品の中ではこの言葉は「something to say when you have nothing to say(何も言うことがないときに何かいうこと)」と言っています。
アニメーションの世界に入り込むシーンで使用され、登場するキャラクターと一緒に踊ったりするシーンになります。
子どもたちもアニメの世界から戻った後もこの言葉を口ずさみ「何も言うことがないとき」でもついつい発して楽しくなってしまう言葉であると感じました。
チム・チム・チェリー
映画の最初に使われる歌「チム・チム・チェリー」は大道芸人になっているバートが歌っているシーンで使われます。バートは煙突掃除屋、絵描きなどいつもいろいろな仕事をしています。
この曲は脚本担当のジョン・ダグラディが描いた絵にインスパイアされました。
ジョン・ダグラディの部屋には原作の後半に出てくる煙突掃除人の絵があり、シャーマン兄弟は「煙突」を英語にした「チムニー(chimney)」という言葉を入れようとしていたところ、「チム・チムニー」という言葉が浮かびました。
その言葉を歌詞に入れ「チム・チム・チェリー」という楽曲ができたそうです。
2ペンスを鳩に
先述したようにこの曲は映画制作の序盤から作られました。
原作で登場し、映画のシーンでも表現されているセント・ポール大聖堂の前の階段で鳩の餌を売るおばあさんをもとに作られました。
ウォルトもこの曲がお気に入りだったそうです。
この曲はシャーマン兄弟をこの映画の音楽家として採用する決め手になったとも言えるのではないでしょうか。
子守唄のシーンで使われているこの楽曲は優しさ溢れる歌詞で表現されるバラードナンバーとなりました。
作品の中でもこの楽曲のメロディを使ったBGMが使われたり、映画を象徴する楽曲の一つにもなります。
『メリー・ポピンズ』をもっと深く知る
『メリー・ポピンズ』が好きな人はもうご存知でしょうが『メリー・ポピンズ』をもっと深く知りたい・楽しみたいという方にオススメの作品が以下の2つです。
- 『ウォルト・ディズニーの約束』
- 『ディズニー映画の名曲を作った兄弟:シャーマン・ブラザーズ 』
『ウォルト・ディズニーの約束』
『ウォルト・ディズニーの約束』では『メリー・ポピンズ』の制作背景を描き、原作者とウォルトとが映画化までの交渉する過程を描きます。
その中でもシャーマン兄弟が楽曲を発表するシーンがあったりと楽曲制作にまつわるシーンも描かれています。
『ディズニー映画の名曲を作った兄弟:シャーマン・ブラザーズ 』
『ディズニー映画の名曲を作った兄弟:シャーマン・ブラザーズ 』ではシャーマン兄弟を中心としたドキュメンタリーとなっています。『メリー・ポピンズ』以外にもシャーマン兄弟が制作に携わった映画音楽にまつわる話などが聞けます。
また、ディズニー映画を担当した様々なスタッフのインタビューも収録されています。
『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』などの名曲を手掛けたアラン・メンケンやピクサー映画の音楽を手掛けたランディ・ニューマンのインタビューも収録されているのでオススメです。
『メリー・ポピンズ リターンズ (Mary Poppins Returns)』
2019年続編となる『メリー・ポピンズ リターンズ』が公開されました。
続編となるこの作品は前作から25年後の設定で、当時子どもだったジェーンやマイケルが大人となりバンクス家に再びメリー・ポピンズがやってきます。
この作品にも前作の楽曲が使用されていたり、前作のシーンを連想させる演出などところどころ盛り込まれており、前作を知っているとより楽しめる作品となっています。
主に音楽を担当したのは作曲:マーク・シャイマン(Marc Shaiman)と作詞:スコット・ウィットマン(Scott Wittman)で、リチャード・シャーマンも制作に参加しています。