『ファンタジア(Fantasia)』は1940年に公開された映画で、ディズニー長編作品第3作品となっています。音声は初のステレオ方式で映画音楽の臨場感がより伝わりやすくなった最初の作品でもあります。
オーケストラで演奏したクラシック音楽に合わせて、7つの短編アニメーションが進行していく内容となっており、物語の中では台詞がありません。
クラシック音楽にも重点が置かれ、台詞がない映画『ファンタジア』は音楽が大きな役割を担っている作品です。
そんな『ファンタジア』の音楽について見ていきます。
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音楽データ
主な音楽担当
- 演奏:フィラデルフィア管弦楽団(The Philadelphia Orchestra)
- 指揮:レオポルド・ストコフスキー(Leopold Antoni Stanislaw Boleslawowicz Stokowski)
演奏団体と指揮者について簡単に説明していきます。
フィラデルフィア管弦楽団
フィラデルフィア管弦楽団は1900年に設立され現在でもアメリカで活動している楽団です。
レオポルド・ストコフスキーが指揮していた時代からスラヴ系やラテン系の音楽を得意としていたそうで、ロシアの音楽家セルゲイ・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」やバルトークの「中国の不思議な役人」、ベルリオーズの「幻想交響曲」などがレパートリーとなっていました。
レオポルド・ストコフスキー
レオポルド・ストコフスキーはアメリカで活動した指揮者です。
ニューヨークシティ管弦楽団、アメリカ交響楽団などのオーケストラを創設したことや、NBC交響楽団、ヒューストン交響楽団などでも指揮を担当しました。
また、作曲家や編曲家としても活動しています。
映画音楽は『ファンタジア』の他にも『オーケストラの少女(One Hundred Men and a Girl)』などの代表作があります。
『ファンタジア』で使用された曲
- 「トッカータとフーガ」ニ短調 作曲:J.S.バッハ 編曲:レオポルド・ストコフスキー
- バレエ組曲「くるみ割り人形」作曲:チャイコフスキー
- 交響詩「魔法使いの弟子」作曲:デュカス
- バレエ音楽「春の祭典」作曲:ストラヴィンスキー
- 交響曲第6番「田園交響曲」へ長調作品68 作曲:ベートーヴェン
- 歌劇ジョコンダより「時の踊り」作曲:ポンキエッリ
- 交響詩「はげ山の一夜」作曲:ムソルグスキー 編曲:レオポルド・ストコフスキー
- 「アヴェ・マリア」作曲:シューベルト
この8曲が使用され、最後の2曲は1つの物語で使われその他は一つの物語に対して1曲ずつとなっています。
トッカータとフーガ
「トッカータとフーガ」はオルガンで演奏するために作られた曲ですが今作ではオーケストラの編曲で演奏されいます。
映像はオーケストラのシルエットや抽象的なアニメーションで表現されています。
くるみ割り人形
バレエ組曲「くるみ割り人形」は通常演奏される「小序曲」と「行進曲」以外の6曲が使われています。作品内の音楽の順番も通常の演奏とは異なる順番で使われました。
【使用された曲】(ファンタジア内のタイトル)
- こんぺい糖の踊り(露の精の幻想)
- 中国の踊り(きのこの踊り)
- あし笛の踊り(開花の踊り)
- アラビアの踊り(水のバレエ)
- トレパーク(アザミの少年と蘭の少女)
- 花のワルツ(秋の精 ヒメハギのバレエ 霜の精霊 雪の精)
アニメーションは森などの自然の世界で妖精や植物、動物が登場する内容となっています。
タイトルにもあるように自然の季節の変化も芸術的に表現しているようです。
魔法使いの弟子
3曲目はいよいよミッキーの登場です。「魔法使いの弟子」の音楽もこの作品で登場した魔法使いミッキーも幅広く現在まで愛されることとなりました。
このアニメーションは魔法の帽子を手にしたミッキーが魔法を使い楽して水汲みの仕事を片付けようとしますが、居眠りをしたところで魔法が止まらず思わぬ事態へとつながってしまいます。
魔法使いの帽子をかぶった『ファンタジア』ミッキーの姿はかわいらしく、現在でも世界中で愛されています。
バレエ音楽「春の祭典」
バレエ音楽「春の祭典」は原始の世界を表現しており、アニメーションも地球の進化を題材とし、数十億年前の宇宙にタイムスリップします。
古代の惑星が表現され、地球の進化を芸術的に表現しています。
交響曲第6番「田園交響曲」
交響曲第6番「田園交響曲」は5つの楽章に分かれています。
『ファンタジア』ではそれぞれにタイトルがつけられています。
【楽章とファンタジア内のタイトル】
- 第一楽章:オリンポス山
- 第二楽章:一角獣
- 第三楽章:バッカナール
- 第四楽章:嵐
- 第五楽章:日没
歌劇ジョコンダより「時の踊り」
「時の踊り」はもともとオペラに使われるバレエのシーンの音楽です。
4つの構成で分けられているの物語はダチョウの踊り、カバの踊り、象の踊り、ワニの踊りの順で展開されています。
バレエ音楽の踊るというイメージがアニメーションに生かされています。
交響詩「はげ山の一夜」、「アヴェ・マリア」
最後は2曲を使用したアニメーションになっております。オーケストレーションの編曲はレオポルド・ストコフスキーが担当しました。
悪魔やキリスト教的な表現が描かれ、音楽とともに対照的な世界を芸術的に表現しています。
休憩中のはなし
『春の祭典』のあとに「休憩」が入ります。
ヴァイオリンの音が鳴ったりしますが、その演奏はフィラデルフィア管弦楽団の団員ではなくディズニーのスタジオ専属の作曲家:ポール・J・スミス(Paul J. Smith)だったそうです(白雪姫やピノキオの音楽の担当)。
また打楽器は効果音やミッキーの声を担当したジミー・マクドナルドみたいです。
クラシック音楽とディズニーの融合
ウォルト・ディズニー自身も『ファンタジア』は「よく知られたさまざまな音楽作品をアニメ化する」という構想を持って制作が進められました。
台詞がない作品で斬新な仕上がりとなりましたが、クラシック音楽に合わせて表現されたアニメーションは抽象的でも芸術的な作品となっています。
『ファンタジア』で使われなかった曲は『メイク・マイン・ミュージック』で
制作の段階では作品で使われた8曲の他にもドビュッシーの「月の光」やロッシーニの「セルビアの理髪師」、モーツァルトの「フィガロの結婚」、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、プロコティエフの「ピーターと狼」などが候補にありました。
今回収録されなかったアニメーションは『メイク・マイン・ミュージック』などに収録されたりもしています。